過払い金請求| 大阪の弁護士が作成したアイフルに対する準備書面 本文へジャンプ
アイフル答弁書に対する準備書面1
「4.悪意の基準時についてB」について


悪意の基準時C
「4.悪意の基準時についてB」について
ア 被告アイフルの主張
「一基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、過払金に付さる悪意の受益者としての利息の起算日は取引終了日の翌日であること
(1) 主張の要旨
仮に悪意の受益者としての利息の起算日を過払金の請求時点であるとの主張が認められないとしても、最判平成21年1月22日(以下『本最判』という。)の判断を前提にすると、少なくとも悪意の受益者としての利息(民法第704条)の起算日は取引終了日の翌日である。以下詳述する。
(2) 悪意の受益者としての利息返還義務の前提
民法第704条は、悪意の受益者は『その受けた利益』に利息を付して返還しなければならないと規定している。当然のことながら、利息を付すためには『受けた利益』が具体的に確定している必要がある。
そして、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において悪意の受益者が『受けた利益』とは、過払金返還債務を意味する。
(3) 『受けた利益』の確定する時期
(ア) 本最判の判断(基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引における消滅時効の起算点)
本最判は、
@基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には、弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下『過払金充当合意』という。)を含む。
Aこのような過払金充当合意においては、新たな借入金債務の発生が見込まれる限り、過払金を同債務に充当することとし、借主が過払金に係る不当利得返還請求権 (以下『過払金返還請求権』という。)を行使することは通常想定されていない。
Bしたがって、一般に、過払金充当合意には、借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務の充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。
として、過払金返還請求権の消滅時効は基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点から進行すると判断した。
(イ) 本最判の判断から導かれる『利益』の確定時期
本最判によれば、過払金充当合意には、(ア)@及びBのとおり、借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務の充当の用に供するという趣旨が含まれているのであるから、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借契約が終了するまでは、悪意の受益者(である貸金業者)の過払金返還債務も具体的に確定しないことになる。
したがって、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、悪意の受益者の『受けた利益』が具体的に確定するのは、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点である。
(4) 結論(悪意の受益者の『受けた利益』の利息発生時期)
基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、過払金に係る不当利得返還請求権が具体的に確定し、悪意の受益者が『受けた利益』が確定するのは、後の貸付の充当が行われないことが確定した取引終了日である。
したがって、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引における悪意の受益者としての利息の支払義務が発生する時期は、取引終了日の翌日である。
(5) 本主張と同様の主張を認めた具体的な判決例
本主張と同様に、悪意の受益者としての利息の起算日を取引終了時の翌日であることを認めたものとして、山口地方裁判所宇部支部平成21年2月25日判決(平成20年(ワ)第229号。公刊物未登載)があり、『過払金返還請求権の消滅時効が、前記1(1)記載の通り継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点から進行すると解されるのは、過払金充当合意においては新たな借入金債務の発生が見込まれる限り、過払金を同債務に充当することとし、借主が過払金に係る不充当返還請求権(過払金返還請求権)を行使することが通常想定されていないから一般的に、過払金充当合意には、借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していれば、その請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという主旨が含まれているものと解するのが相当であるとされるからである(前記最高裁判所平成21年1月22日第一小法廷判決参照)。そうすると、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了するまでは、過払金返還請求権も具体化しておらず、これに対する悪意の受益者としての利息の支払義務も発生していないというべきである。』と述べているところであり、また、大阪高判平成20年4月18日判決(平成19年(ネ)第3343号(最高裁不受理決定により確定済み)。公刊物未登載)においても、『本件各貸付は、基本契約に基づく連続した貸付取引であり、債務の弁済は、各貸付毎に個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく、基本契約に基づく借入金全体に対して行われ、充当の対象となるのも全体としての借入金債務であると認められるから、控訴人と被控訴人は、一つの貸付けを行う際に次の個別の貸付けを行うことが想定される契約関係にあることを前提に、複数の権利関係が発生するような事態の生ずることを望まなかったものといえ、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意していたと認められる。したがって、本件において、過払金の不当利得返還請求権の金額や内容は、後の貸付への充当が行われないこととなる取引終了日以降に確定するのであり、当該時点までは金額や内容が不確定、浮動的であって、後の貸付への充当の有無、充当額等により変動することが予想されるから、利得の金額や内容も不確定、浮動的であり、これにつき利息を付して返還させることは、当該利息の金額や内容自体不確定、浮動的である上、不当利得制度を支える公平の原理をも考慮すると、不相当である。本件において、上記最終完済日より前に取引が終了したといえないことは明らかであるから、控訴人主張の各日時をもって、上記利息を付すことのできる開始時点とすることはできず、上記最終完済日以降、新たな借入や返済がされることがなくなり過払金の不当利得返還請求権の金額や内容が確定して取引が終了したということができ、当該時点からの利息を付した返還を認めることができる。』と述べているところである。
したがって、これらの判決からも明らかなとおり、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引における悪意の受益者としての利息の支払義務が発生する時期は、各過払金の発生時ではなく、取引終了日の翌日である。」
イ 原告の認否及び反論
(ア) 全て否認及び争う。
(イ) 被告アイフルの主張は,消滅時効の起算点に関する判例を引用して,民法704条前段所定の利息の発生時期を論ずるものに過ぎない。すなわち,被告アイフルの主張は,消滅時効の起算点の論点と民法704条前段所定の利息の発生時期の論点を混同するものに過ぎずない。
従って,被告アイフルの主張は,理由がない。
(ウ) 民法704条前段所定の利息の発生時期について,平成21年9月4日,最高裁判所第二小法廷判決があったので,これを引用し,原告の主張とする(甲7号証)。
「金銭消費貸借の借主が利息制限法1条1項所定の制限を超えて利息の支払を継続し,その制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生した場合において,貸主が悪意の受益者であるときには,貸主は,民法704条前段の規定に基づき,過払金発生の時から同条前段所定の利息を支払わなければならない(大審院昭和2年(オ)第195号同年12月26日判決・法律新聞2806号15頁参照)。このことは,金銭消費貸借が,貸主と借主との間で継続的に金銭の借入とその弁済が繰り返される旨の基本契約に基づくものであって,当該基本契約が過払金が発生した当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものであった場合でも,異なるところはないと解するのが相当である。」
(エ) 従って,いわゆる過払金充当合意を含む基本契約に基づく金銭消費貸借の借主が利息制限法所定の制限を超える利息の支払を継続したことにより過払金が発生した場合でも,民法704条前段所定の利息は過払金発生時から発生することは明らかである。
(オ) よって,本件においても,民法704条前段所定の利息は過払金発生時から発生する。




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