「2.悪意の基準時について@」について
ア 被告アイフルの主張
「仮に、百歩譲って被告が悪意の受益者であるとしても、原告の弁済により過払金が発生した都度、各過払金に対して利息を付すべきであるとの原告の主張は認められるべきではない。民法704条にいう『悪意』とは、具体的利益に対してこれを収受する権限のないことを具体的に認識している状態をいう。すなわち、『悪意』ありと認められるためには、その前提として、具体的に受益があったこと自体を認識している(受益に対して『故意』つまり受益に対する表象及び認容があると言い換えても良い)必要がある。
しかしながら、被告は、本件訴訟に直面して初めて、みなし弁済の立証が困難であるとの認識を有し、本件訴訟においてこれを特段具体的に主張立証することを断念するに至ったのであり、それよりも前の時点で、自己の収受していた弁済のうち 制限利率超過部分について受領権限がないと認識した事実は無い。本件訴訟が提起されるにあたって、被告がみなし弁済の立証可能性を初めて具体的に検討し、その結果断念し、この時点で初めて自己が弁済として受領した制限利率超過部分に保有権限が無いことを認識するに至ったのであるから、民法704条の利息を付すべき始期は、訴状送達の翌日であると解するべきである。」
イ 原告の認否及び反論
(ア) 否認及び争う。
(イ) 被告アイフルの主張は,「悪意」について,独自の見解を述べたに過ぎず,これまでの最高裁判所の見解を無視するものであって,理由のない主張である。
(ウ) 悪意の受益者に関する先例となる判例は,最高裁判所第三小法廷平成19年7月17日判決(事件番号 平成18年(受)第1666号)(甲6号証)である。
この判決によると,貸金業者が利息制限法の制限超過利息を受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条「悪意の受益者」であると推定されるものとしている。
(エ) 本件においても,被告アイフルは,各弁済の弁済金のうち,制限超過部分を認める計算書を提出しているのであるから,各弁済金を受領した時点において貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有していたとの推定を受ける。
(オ) 被告アイフルは,この推定を破るだけの反証を行っていない。
(カ) 従って,被告アイフルは,民法704条にいう「悪意」の受益者に該当する。
(キ) さらに,平成21年9月4日に,最高裁判所第二小法廷判決があったので,引用する(甲7号証)。
(ク)「金銭消費貸借の借主が利息制限法1条1項所定の制限を超えて利息の支払を継続し,その制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生した場合において,貸主が悪意の受益者であるときには,貸主は,民法704条前段の規定に基づき,過払金発生の時から同条前段所定の利息を支払わなければならない(大審院昭和2年(オ)第195号同年12月26日判決・法律新聞2806号15頁参照)。このことは,金銭消費貸借が,貸主と借主との間で継続的に金銭の借入とその弁済が繰り返される旨の基本契約に基づくものであって,当該基本契約が過払金が発生した当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものであった場合でも,異なるところはないと解するのが相当である。」
(ケ) 従って,いわゆる過払金充当合意を含む基本契約に基づく金銭消費貸借の借り主が利息制限法所定の制限を超える利息の支払を継続したことにより過払金が発生した場合でも,民法704条前段所定の利息は過払金発生時から発生することは明らかである。
(コ) よって,被告アイフルは,民法704条前段所定の利息は過払金発生時から発生ることは明らかである。
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弁護士 佐 野 隆 久
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