5 「第5.取引の分断が発生しており,前段過払金を後段貸付金へ充当する理由が無いことについて」
(1) 「1.別紙1各枝番計算書ごとに異なる基本契約を締結したこと,前段約定残債務を全額弁済したうえで,その後に改めて基本契約を締結し,取引が行われたことについて」について
ア 第1段落について
(ア) 被告の主張
原告は,訴状において,原告被告間の取引を全て一連の取引であるものとして,過払金をその後の新たな借入金債務に充当して計算しているが,少なくとも,原告被告間の取引は,答弁書別紙1各枝番取引計算書毎に異なる基本契約に基づいた取引が行われたものである。
(イ) 原告の認否及び主張
否認及び争う。
本件は,一連の契約である。
イ 第2段落について
(ア) 被告の主張
つまり,前段の枝番の最終取引日においては,原告は,かかる前段基本契約に基づき,約定残債務の全額を任意に弁済し,その後,別紙説明書「休眠期間」の間,何らの取引も行わず,その後後段の取引を行うべく,改めて後段基本契約を締結したうえで,それぞれの取引がなされたものである。
(イ) 原告の認否及び主張
否認及び争う。
被告主張の所謂休眠期間は,平成8年3月29日と同年9月14日の僅か5か月強である。このような短期間を休眠期間と言うことは不当である。
ウ 第3段落について
(ア) 被告の主張
したがって,これらの取引を利息制限法所定利率で再計算するに際しては,前段の取引で発生した過払金を後段の取引に基づく借入金債務に充当する理由はない。
(イ) 原告の認否及び主張
否認及び争う。
被告主張の「前段の取引で発生した過払金を後段の取引に基づく借入金債務に充当する理由はない。」は,二つの取引を分断することを前提としており,理由がない。
エ 原告の主張
(ア) 被告の主張は,平成20年1月18日最高裁判決を無視するものである。同判決の内容は,概ね次のとおりである。
(イ) 同判決においては,基本契約が異なる場合に第1の基本契約に基づく取引にかかる過払金が第2の基本契約に基づく取引に係る債務に充当される場合の特段の事情について判示している。その特段の事情として掲げられた中には,「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間」や「第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等」が挙げられている。
(ウ) 本件の場合には,第1の基本契約に基づいて,平成元年8月16日から平成8年3月29日までの約6年7か月という長期にわたって貸付と弁済が繰り返され,その僅か5か月強後である平成8年9月14日に,再度貸付がなされており,その契約条件も利息や遅延損害金といった内容は,貸金業法で定められた利息の上限である点で全く同じである。このような事情からは,同判決に照らした場合,本件は明らかに,「第1基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することが出来る場合」であって,「第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意」が存在するものと解される事案である。
(2) 「2.被告会社が『分断』を主張するケースにおける具体的な条件について」について
ア @について
(ア) 原告の認否及び主張
不知及び争う。
被告の主張は,前述の平成20年1月18日最高裁判決を無視した主張でしかない。
イ A乃至Cについて
(ア) 原告の認否及び主張
否認及び争う。
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